研究概要 |
【はじめに】血小板由来増殖因子B鎖は強力な平滑筋細胞の増殖因子である.本研究では人工血管移植後の吻合部狭窄の軽減を目的に,吻合部に同因子を阻害する受容体細胞外領域をコードした遺伝子を導入し,狭窄の抑制効果を検討した.本年度はラットを用いた本実験系の対照群の作製,遺伝子の外膜側からの投与群の作成を行なった. 【方法】全身麻酔下にラットの腹部大動脈を露出し,微小血管遮断鉗子にて遮断した.直径2mmのpolytetrafluoroethylene製人工血管を10-0prolene糸を用いて吻合し,2週間後に犠牲死させた.A群は吻合以外の手術操作は何も加えなかった.B群は前述の操作に加え大腸菌LacZ遺伝子を組み込んだ非増殖性組み換えアデノウイルス(AxLacZ)100μlを末梢側吻合部外膜側より投与した(浸透させた).C群では末梢側吻合後にアデノウイルス(AxLacZ)100μlを投与し,30分後に血流を再開した.B,C群はサブグループとして濃度が1x10^8, 1x10^9, 1x10^<10>, 1x10^<11>pfu/mlの4群(1, 2, 3, 4)を作成した.各群はラット5匹とした.切除した吻合物にX-Gal染色を施行し,陽性細胞をカウントした. 【結果】生存ラットが各群の3〜5匹であったため平均値のみを求めた.コントロール群(A群)の陽性細胞発現率は0%であった.B1群では平均3.5%,B2群では5.5%,B3群では5.0%,B4群では9.5%であった.C1群では平均2.6%,C2群では5.0%,C3群では8.2%,C4群では9.0%であった. 【考察】nが少ないため統計学的有意差はないが,AxLacZ濃度に応じた発現率がB,C群ともに認められる傾向があった.外膜,内膜側投与の差は明らかではなかった.nを積み重ね検討してゆきたい.
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