研究概要 |
肝虚血およびエンドトキシン(LPS)肝障害に対し炎症反応の転写因子であるNF-kB活性をblockすることにより、炎症性サイトカインの発現の制御により臓器不全治療への応用を試みた。NF-kBに対する転写因子結合配列と同一配列を持つNF-kB decoyをLPS肝障害およびラット肝移植急性拒絶反応モデルを用いて検討し、以下の結果を得た。 1.NF-kB decoy投与はLPS投与後のTNF-α生成を有意に抑制し、24時間、48時間、72時間の動物生存率(52%。33%、33%)を77〜80%まで有意に増加させた。また肝組織のTNF-αmRNAおよびIL-6mRNAを低く抑制する傾向を示した。 2.NF-kB decoyの作用機構を明らかにするため、invitroでJurkat cell lineを用いてLPS添加後のNF-kB活性増加に及ぼす効果を調べたところ、decoy投与はNF-kBの活性化を明らかに抑制することが判明した。 3.DAラットの肝臓をLewisラットに移植する急性拒絶反応の肝移植モデルでも、肝保存液へのNF-kB decoyの添加は、対照群の生存日数(15日)を有意に増加(平均20日、最長30日)させた。また、decoyの添加は移植肝のTNF-αmRNA, IL-6mRNAの発現を抑制し血中のTNF-α,IL-6の増加を有意に抑制した。 以上の結果、LPS肝障害に対しNF-kB decoyの有用性が示され、また肝移植後の急性拒絶反応の抑制等にもNF-kB decoyの遺伝子治療への可能性が示唆された。
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