研究概要 |
TSの発現を抑制する効果的なTS antisense ODNsを作製できないため、リポソームに抗癌剤を封入しin vitroの抗腫瘍効果を検討し、in vivoでの経気道投与の可能性を検討した。最初に、肺癌細胞株とリポソームとの親和性を検討した。12 well dishに肺癌細胞株(Ma44-3,Ma25,FT)1x10^4細胞を注入し24時間培養した。各wellにローダミン標識ステロイドリポソームを添加し、mediumの濃度を0,10,50ug/mlとした。親和性を共焦点レーザー顕微鏡で観察した。Ma44-3細胞とリポソームの親和性は高く、Ma25細胞は中等度,FT細胞は低い。以下の実験には親和性の高いMa44-3を使用した。 ローダミン標識CDDPリポソームを使用した。CDDP単独のIC50が40ug/mlであるのに対して(48,96 hr incubationのIC50は変化なし)、CDDP-liposomeは48hr incubationでは10ug/ml、96hr incubationでは1.5ug/mlであった。CDDP-liposomeはCDDP単独よりIC50は低く、長期incubationすることでその抗腫瘍効果は増大する。次にSCIDマウスをプラスチック・ボックスに入れ、ネブラーザーによりローダミン標識CDDPリポソーム3mlをエアゾル化しボックス内に投与した(15分)。蛍光顕微鏡にて観察するとコントロールのマウスの肺では、ローダミンが検出されないのに対してローダミン標識CDDPリポソーム投与群はローダミンが検出された。ローダミンの検出される領域は散在性で、瀰漫性ではない。投与されたマウスによってもローダミンの検出量には違いがある。リポソームに抗癌剤を封入し、経気道投与による肺癌の治療の可能性があることが示唆された。
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