【日的】今回我々は、NODマウスの膵島α細胞に、活性型TGF-β1を発現させ自己免疫性糖尿病の発症が抑制されたトランスジェニックNODマウス(NOD-RGP-TGF-β1)を用いた膵島移植モデルを作成した。この膵島移植モデルを用いて、NOD-RGP-TGF-β1における免疫寛容の誘導とその機序の解析を行った。【方法】ドナーマウスの膵臓から単離した400個の膵島を、顕微鏡下にレシピエントマウスの左腎被膜下に移植した。【結果】NOD-RGP-TGF-β1では雌雄とも45週齢まで糖尿病の発症が完全に抑制された。しかし、自然発症糖尿病NODマウスに移植したNOD-RGP-TGF-β1の膵島は、移植後10日以内に全例(n=6)糖尿病再発し拒絶された。光顕像でも、移植されたNOD-RGP-TGF-β1の膵島内への著しいリンバ域浸潤を認めた。そこで自己反応性T cellの産生を検討するために、streptozotocin誘導糖尿病(A)雌NOD-RGP-TGF-β1と(B)雌NODマウス(各々n=4)をレシピエントに用いて、NODマウスの膵島を移植した。移植後、さらに自己免疫反応を励起する目的で、cyclophosphamide(CY)(200mg/kg計2回投与)追加投与した。(B)群ではCY1回投与で全例が糖尿病再発したが、(A)群ではCY2回投与しても3/4例が糖尿病再発しなかった。移植膵島の抗インスリン染色では(B)群の膵島内にはインスリン陽性細胞はほとんど認められなかったが、糖尿病再発しなかった(A)群では移植膵島内に多数のインスリン陽性細胞を露めた.【結語】NOD-RGP-TGF-β1の膵島は、自然発症糖尿病NODマウスの自己免疫学的破壊に対する抵抗性は示さなかったが、TGF-β1の作用でNODマウスの自己反応性T cellの産生が抑制されている可能性がある。
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