Stat5(Signal transducer and activator of transcription 5)の乳癌の進展における役割を解析してきた。 レポータージーンアッセイにより、dominant-negative Stat5であるStat5aΔ740はCOS-7細胞においてエストロゲンレセプター(ER)αおよびERβの転写活性を完全に抑制した。また、ER陽性ヒト乳癌細胞であるT-47D、MCF-7細胞において、Stat5aΔ740は内因性ERの転写活性を完全に抑制した。Stat5aΔ740を発現するアデノウイルス(AdStat5aΔ740)をT-47D、MCF-7細胞に感染させることにより、これらの細胞でStat5aΔ740の高発現を得た。AdStat5aΔ740の感染により高発現したdominant-negative Stat5はMCF-7細胞の増殖を促進したが、T-47D細胞の増殖は有意に抑制した。さらにT-47D細胞において、dominant-negative Stat5がcaspase-3を介したアポトーシスを誘導することを見出した。ER陽性乳癌の治療にdominant-negative Stat5が有用である可能性が考えられ、ERのシグナル伝達に関与する因子の検討が新しい薬剤の開発につながる可能性が示唆された結果である。 上記に加えて、臨床で得られた乳癌組織約300例を用いて、ヒト乳癌におけるStat5の発現とその意義を検討中である。
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