研究概要 |
大腸癌の手術症例に,血行性転移の早期診断を行うことで,大腸癌の治療成績が向上すると考えられる.現在,RT-PCRを応用した血液中の癌細胞の同定が行われ、微小転移の診断、予後との関連について解析されている.今回,血中癌細胞の存在だけでなくその転移能や浸潤能に関する特性をとらえることで,より転移しやすい形質を同定することにより,血行性転移の早期診断に応用することを目的とした.大腸癌22例(Stage0:1例,StageI:3例,StageII:6例,StageIIIa:5例,StageIIIb:3例,StageIV:4例[肝転移2例を含む])を対象に,門脈血と末梢血を採取し,癌の存在診断はCEAmRNAのRT-PCRで行い,上皮型・変異型CD44mRNAとMMP-7mRNAの発現の有無についてRT-PCRにより検討し,血行性転移との関連について検討した.血中のCEA mRNAの発現により,病期の早い段階(StageI)から血中に存在することが確認された。上皮型・変異型CD44の発現はStageIIまでは門脈血でも0%であったが,StageIIIおよびIVでは門脈血で80%,末梢血で50%発現しており(門脈血p<0.01,末梢血p<0.05),病期の進行に伴って発現率が増加した.また,肝転移症例は2例とも上皮型・変異型CD44mRNAを,門脈血末梢血に発現していた.一方,MMP-7mRNAはすべての病期において発現を認めなかった.血中の上皮型・変異型CD44mRNAの発現は血行性転移の転移しやすい形質を反映しており,血中の上皮型・変異型CD44 mRNAの発現による大腸癌血行性転移の早期診断の可能性が示唆された.現在,門脈血末梢血中癌細胞CD44mRNA発現について,さらに症例を蓄積している.
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