研究概要 |
大腸癌の手術症例に,血行性転移の早期診断を行うことで,大腸癌の治療成績が向上すると考えられる.現在,RT-PCRを応用した血液中の癌細胞の同定が行われ、微小転移の診断、予後との関連について解析されている.今回,血中癌細胞の存在だけでなくその転移能や浸潤能に関する特性をとらえることで,より転移しやすい形質を同定することにより,血行性転移の早期診断に応用することを目的とした.大腸癌32例(Stage 0:1例,Stage I:4例,Stage II:9例,Stage IIIa:9例,Stage IIIb:4例,Stage IV:5例[肝転移2例を含む])を対象に門脈血と末梢血を採取し,22例については通常のRT-PCRによりCEA,上皮型・変異型CD44,MMP-7 mRNAの発現について検討し,臨床病期や血行性転移との関連について検討した結果,上皮型・変異型CD44の発現がCEAやMMP-7と比べより臨床病期に相関し(P<0.05),肺(1例)や脾(1例)に転移した症例を予測可能であった.上皮型・変異型CD44はCEAより血行性転移危険群を絞り込むことが可能であった.次に11例を対象に,CD44 variant exon 8-10mRNAをターゲットとして免疫磁気ビーズを用いた癌細胞の採取とreal-time RT-PCRによる定量を行った結果,定量可能であった.血中の上皮型・変異型CD44 mRNAの発現は血行性転移の転移しやすい形質を反映しており,血中の上皮型・変異型CD44 mRNAの発現による大腸癌血行性転移の早期診断の可能性が示唆された.
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