アデノウィルスをベクターとしてAdCMVβ-gal(1x10^9pfu)を作成し、ラット腎・肝・心移植モデルを用いて遺伝子導入効果を検討した。腎移植モデルでは腎動脈経路でAd-β-galを投与し、冷生食中に90分保存した後同所性に移植、同様に肝臓では経門脈的に、心臓では経動脈的投与し、移植後の移植臓器におけるAd-β-gal発現を測定した。腎では移植後2日で80%前後、7日で約15%の領域にβ-galの発現を見たが、10日を過ぎるとほぼ消失していた。肝臓では10日目でも70%以上の発現を認めたが、30日までには消失した。しかし、心臓では導入効率が極めて悪く2日目でも約15%、7日目には数%の発現に留まった。この結果より、今後は腎・肝移植モデルを用いてAd-IL4、Ad-IL10の同種異系臓器移植における免疫抑制効果を検討していく予定である。 一方、免疫寛容物質の検索においては、ラット肝移植モデルにおいてbilomaの発生率が高く、長期生存モデルの作成に当たりisograftのコントロールモデルを用いて実験環境の再整備と術後管理の対策を余儀なくされている。 大動物を用いた研究では、遺伝子導入効果とその分布、安全性及び再環流障害の軽減の検討を目的とするため、基礎的検討のためにはisograftモデルが必要となる。この問題に対し通常のビーグル犬(outbreeding)を用いた新しい単独肝移植モデルの作成に取りかかっている。
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