研究概要 |
近年様々な癌関連抗原遺伝子の発見と相俟って,樹状細胞(dendritic cell:DC)の大量培養が可能となったことから,DCを用いた癌ワクチン療法が注目されている。特にDCと自己癌細胞の融合細胞を用いた癌ワクチン療法は,既知の癌抗原のみならず未知の抗原に対しても特異免疫を誘導し得ることから,その臨床応用が期待されている。 今回我々は,まずこれまでのDCと癌細胞の融合方法の問題点であった融合効率の改善および安全性について基礎的な検討を行ない以下の結果を得た。 1)細胞融合法の改良:ポリエチレングリコール処理にエレクトロポレーション法を導入することにより,融合効率が著しく改善された。 2)融合する癌細胞の不活化の検討:100Gy以上の放射線照射で,癌細胞に確実にアポトーシスが誘導されることが判明した。 3)効果判定のパロメーターの検討:治療効果の免疫学的モニタリング法として,エリスポットアッセイの有用性が確認された。 4)融合細胞の安全性の確認:DCと放射線照射腫瘍細胞による融合細胞は,その後DCの寿命とほぼ同じ運命をたどることが明らかとなった。 昨年度,本大学倫理委員会の申請が受理され,現在インフォームドコンセントの得られた,他の治療不応答性の高度進行・再発消化器癌を対象に第I相臨床試験を開始している。
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