研究概要 |
目的:腫瘍細胞全体を腫瘍抗原とした樹状細胞ワクチン療法は,HLAのタイピングにかかわらず,未知の腫瘍抗原を含めた複数の抗原に対して抗腫瘍免疫が誘導でき得る利点を持つ。これまで消化器癌症例での臨床試験の報告はない。今回我々は、進行再発消化器癌を対象に第I相臨床試験を施行し,安全性の評価および臨床効果について検討した。 方法:十分なインフォームドコンセントの後、文章による同意の得られた標準的治療法無効な進行再発消化器癌9例を対象とした。樹状細胞は,leukapheresisで採取した末梢血単核球をGM-CSFとIL-4さらにTNFα,IL-1β,IL-6およびPGE2で刺激し誘導した。融合細胞ワクチンは、樹状細胞と放射線照射自己腫瘍細胞をPEGとElectroporationを用いて作製した。ワクチンは2週間隔で計4回鼠径リンパ節近傍に接種し,安全性と有害事象の評価を行った。さらにワクチン接種前後の免疫反応(皮内テスト,Cytokine array, Elispot assay, Th1/Th2, Tc1/Tc2, CD4/CD8)および臨床効果を評価した。 結果:対象症例全例に重篤な有害事象は認められなかった。血液中のリウマチ因子および抗核抗体はいずれも低値で,自己免疫疾患の兆候は認められなかった。9例中6例で,ワクチン投与後tumor lysateに対する皮内反応が陽性に転じた。また9例中6例でTh1/Th2またはTc1/Tc2バランスの改善を認め,少なくともその内5例で血清IAP値の低下を認めた。臨床効果はSD 5例,PD 4例であった。 結語:進行再発消化器癌に対する融合細胞療法の安全性が確認された。抗腫瘍免疫の誘導は9例中6例に認められ,臨床効果はSD 5例,PD 4例であった。
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