研究概要 |
ブタからヒトへの異種移植の可能性を追求することを目的として、ブタのMHC(SLA)クラスI領域の塩基配列決定を行い、ヒトのMHCクラスI領域との遺伝子構成の比較を行った。さらに得られたSLAクラスI遺伝子の塩基配列情報から、発現クラスI遺伝子の多型性を明らかにし、SLA遺伝子のDNAタイピング法の開発を試みた。 まず、SLAクラスI領域内の古典的クラスI遺伝子群と非古典的クラスI遺伝子群間約400kbの領域に位置する4個のBACクローンについて塩基配列を決定し、この領域の遺伝子構成や特徴について解析を行った。その結果、MHC遺伝子を含まない領域では、ヒトと同様の非MHC遺伝子が19個見出され、ヒトとブタ間で高度に保存されているが、MHC遺伝子を含む領域では、相当するHLAクラスI領域と比較して遺伝子の並び換えや欠損があることが明らかになった。さらに本研究で塩基配列決定を行った領域と、Chardonグループが塩基配列決定した領域を合わせて、SLAクラスI遺伝子群を含む領域については、合計979kbの全塩基配列決定が完了した。この979kbに相当する領域はヒトでは約1,550kbであり、両者間の長さの違いは繰り返し配列の種類と密度の相違、並びにMHC遺伝子を含む領域の遺伝子構成の相違によるものと考えられた。 また、SLAクラスI遺伝子のDNAタイピング法を確立するために、SLA-1,-2,-3遺伝子の第1-第3エキソン間の各クラスI遺伝子座を特異的に増幅するプライマーを設計した。これらのプライマーを用いて、各遺伝子座において新対立遺伝子が見いだされた。さらにSLAクラスI, II遺伝子の多型性を簡便、迅速に解析するために、クラウンミニブタのSLAクラスI, II遺伝子(5遺伝子座)の9アリルについて、PCR-SSP法とPCR-RFLP法による簡便なタイピングが可能であり、これらの方法は、SLA純系ミニブタの迅速な選別に有効であった。
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