研究概要 |
[目的]Peyer板は小腸における特殊な粘膜防御機構の中心的役割を担うとされる。そのT細胞領域には高内皮細静脈(HEV)が存在し、ここに接着分子MAdCMA-1が発現分布し、リンパ球homingにかかわる免疫応答に重要な役割を演ずる。今回、小腸移植拒絶反応に伴う腸管粘膜防御機構の破錠がどのように進行していくかに関して、MAdCAM-1の発現分布とリンパ球サブセットの局在の変化を検討し、さらにHEVに対するリンパ球homing様式の変化を検討した。 [方法]donorにBNラット、recipientにLEWラットを用い、同所性全小腸移植(免疫抑制剤非投与)を施行し、3,4,5,6,7日目に犠牲死させ、graftを採取し凍結標本を作製した。抗MAdCAM-1抗体(OST12)を用いて免疫組織染色(SAB-HRP法)を行った。MAdCAM-1が発現とこれに関与するリンパ球の分画を同定するために、抗MAdCAM-1抗体とともに抗B細胞抗体(HIS24)、抗T細胞抗体(OX19)を用いて、二重染色(SAB-HRP/PAP-ALP法)を行った。移植腸管におけるHoming現象を確認するために、in vitro lymphcyte/HEV binding assay(未固定の凍結標本上に正常リンパ球を乗せる)を行った。対照は正常小腸と同系移植(LEW-LEW)のgraftを用いた。 [結果](1)対照群では、Peyer板のHEVの血管内皮にMAdCAM-1が強く発現したが、絨毛の血管にほとんど発現しなかった。この血管内腔にはB細胞とT細胞が共にみられた。(2)異系移植群では、拒絶反応の進行に伴い、著名なリンパ芽球化を伴うT細胞領域の著名な拡大と著名なアポトーシスを伴う胚中心(B細胞領域)の縮小がみられ、Peyer板HEVにおけるMAdCAM-1の発現は減弱した。一方で、絨毛底部の小血管に術後4日目よりMAdCAM-1の発現が増強がみられ、絨毛先端部の小血管においても術後6日目よりその発現の増強がみられた。(3)異系移植群の移植腸管Peyer板のHEVに対するリンパ球の結合能は正常腸管に比べて減弱した。 [結語]小腸移植拒絶反応の進行に伴い、リンパ球homingの免疫応答に関るとされる接着因子MAdCAM-1の発現の局在は、HEVから絨毛底部の小血管にシフトした。加えて、HEVに対するリンパ球の結合能は腸管拒絶時に減弱し、リンパ球homingの様式が大きく変化したと考えられた。
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