研究概要 |
Pab240はp53遺伝子の癌で認められるメジャーなDominant Negative変異であるR273P,R175H,あるいはV143Aにともなって起きるタンパク質の構造変化によって露出するepitopeを特異的に認識する抗体である。Pab240を産生するハイブリドーマ細胞より、H鎖とL鎖のepitope認識部位(可変領域)をそれぞれクローニングしLinkerにて結合し、単鎖抗体(SgFv)を作成し、sequenceを確認した。これと平行してBRCA1とBARD1のRINGフィンガーを組み込んだ人工的なユビキチンリガーゼを作成した。最近われわれは家族性乳癌の原因遺伝子であるBRCA1とBARD1のRINGフィンガーがheterodimerとして高いユビキチンリガーゼ活性を持つことを発見した(J. Biol. Chem. 276:14537-,2001)。これら2つのRINGを1つの遺伝子に組み込んだところ(RING-RING)、その遺伝子産物はhomo-trimerを形成し、非常に高いユビキチンリガーゼ活性を有していた。この2つのRINGドメインに、さらにp57にたいする基質結合ドメインとしてPCNAを結合させた(RING-RING-PCNA)ところ、in vivoにてp57をdosage dependentに分解した。MG132とLLnLでこの分解が阻止できることから、プロテアソーム依存性分解であることが証明された。他のコントロールのタンパク質に対してはこの様な作用はなく、分解は特異的であった。さらに、RING-RING-PCNAはp57によって抑制された細胞増殖を回復せしめた(Biochem. Biophys. Res. Commun. 295:370-,2002)。以上より、RINGフィンガーをもちいて人為的に標的としたタンパク質の分解が可能なことが判明した。このRING-RINGユビキチンリガーゼの基質結合部分にPCNAのかわりに上記のScFvを結合させたタンパク質を作製したが現在のところ変異型p53のユビキチン化には成功していない。その原因として作製したScFvと変異型p53とのAffinityが弱いことが考えられたため、新たなScFvをDNA合成法によって作製した。
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