研究概要 |
(1)ラット消化管運動に対する鍼通電刺激の効果とそのメカニズム:ラットの空腸にstrain gaugeを縫着して空腸運動を記録し、自律神経作用薬の影響および鍼通電刺激の効果について検討した。その結果、腹部通電刺激や後肢鍼通電刺激によってネオスチグミン投与時と同様の変化がみられIMC(空腹期強収縮運動)の出現頻度が増加する事がわかった。また、ラットの近位結腸にワイヤー電極を縫着してLSB(Long Spike Bursts)を記録した。鍼通電は後肢へ通電頻度(3,15,100Hz)を変えて比較した結果、100Hz鍼通電によって結腸の電気活動が有意に増加した。このメカニズムを検討するために、CCK-AあるいはCCK-B受容体拮抗薬を脳室内投与後に100Hz鍼通電を行った結果、CCK-A受容体拮抗薬投与よって結腸運動亢進反応が拮抗された。また、この結果を裏付けるために鍼通電前後の脳脊髄液中のCCK濃度を定量した結果、明らかに鍼通電後にCCKが増加していた。従って鍼通電刺激によって中枢のCCKが増加し、CCK-A受容体を介して腸管運動が亢進される事が確認出来た。 (2)ヒト胃電図を指標とした鍼刺激の影響に関する検討:胃電図に関する基本的な検討を行うと共に、人為的にmotion sicknessを引こし、その際の嘔気に対する鍼刺激の影響について胃電図を指標として検討した。その結果、置鍼群では、motion sicknessに伴う胃電図の異常波形の出現が抑制され、他群に比べ早期に正常波形へと回復した。また、嘔気の出現率とその程度についても、置鍼群では対照群に比して低い傾向を認めた。内関穴に対する置鍼刺激は、胃電図の異常波形の出現を抑制し嘔気などを中心とするmotion sickness症状の緩和に有効であることが示された。
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