1.タクロリムスをポリ乳酸グリコール酸共重合体に封入した生分解性マイクロスフィアを調製した。粒子径が87〜90μm、タクロリムス封入率は、6.48w/w%と6.60w/w%の2サンプルを調整した。 2.DA/Slcラットを用いて、タクロリムス封入マイクロスフィア1.6mg/kg(n=9)、2.4mg/kg(n=5)、および7.2mg/kg(n=7)(以下、いずれもタクロリムス投与量)を1回のみ皮下投与し、投与18日後までタクロリムスの血中濃度を測定したところ、14日間、平坦な一定の濃度推移を示し、投与量とAUCとに正の相関を認めた。 3.臓器集積性を調べるため、DA/Slcラットにタクロリムス封入マイクロスフィア4.8mg/kg(n=6)を1回だけ皮下投与し、10日後に組織内タクロリムス濃度を測定したところ、所属リンパ節の前肢腋窩リンパ節に高い組織集積性を示した。 4.DA/Slcラットをドナー、LEW/Seaラットをレシピエントに鎌田のカフ法による同所性全肝移植を行い、タクロリムス封入生分解性マイクロスフィア4.8mg/kg(n=3)、2.4mg/kg(n=4)、0.16mg/kg(n=5)、タクロリムス原末1.0mg/kg(n=7)、生理食塩水10mL/kg(n=5)を、移植直後にそれぞれ1回のみ皮下投与して生存日数を比較した。タクロリムス封入生分解性マイクロスフィア4.8mg/kg投与群が、他の投与群に比して有意な生存日数の延長を認めた。 以上の結果より、タクロリムス封入生分解性マイクロスフィアは、安定した徐放性を優れた局所免疫抑制効果を持ち、タクロリムスの新剤型薬として期待できる。
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