研究概要 |
カンナビノイドは大麻の薬効成分であり、内因性のカンナビノイドとしてはAnandamide(ANA)等がある。近年、カンナビノイドが敗血症性ショックのメディエーターになっていることが明らかになった。急性膵炎の病態には不明な点も多いが、急性膵炎とカンナビノイドとの関連は全く明らかにされていない。そこで、今回、両者の関連について検討し、カンナビノイドを対象とした新しい治療法の可能性を模索した。Wistar系雄性ラットを用い、急性膵炎モデル(軽症;Cerulein 膵炎、重症;5%タウロコール酸膵炎)を作成した。膵炎作成後に血漿ANAをLiquid chromatography/tandem mass spectrometry(LC/MS/MS)法を用いて測定し、各群における腎カンナビノイド受容体(CB1受容体)の発現を免疫組織化学染色を用いて評価した。さらに、重症群において、カンナビノイド拮抗薬(SR141716A)投与を行い、膵の局所所見および生存率の変化を観察した。軽症、重症膵炎群ともに血漿ANA値は上昇したが、重症群では軽症群に比べて血漿ANA値は有意に高値を示した。(正常ラット:284.4±27.4pg/ml,軽症(12時間後):387.4±2.0pg/ml,重症(12時間後):597.0±48.2pg/ml, p<0.05v.s.軽症群)。また、重症急性膵炎の誘導により、腎糸球体におけるCB1受容体の発現増強が観察された。さらに、重症急性膵炎誘導後にカンナビノイド受容体拮抗薬を投与したところ、膵局所の所見に変化はみられなかったが、生存率の著明な改善がみられた。以上より、カンナビノイドは急性膵炎の病態に関与しており、カンナビノイド阻害による新しい治療法の可能性が示唆された。
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