研究概要 |
雑種成犬を用い、消化管運動測定用のstrin gauge force transducerを十二指腸、回腸2カ所、結腸5カ所、の計8カ所に縫着した。・意識下で消化管運動を測定し、アドレナリンα1受容体帯拮抗剤であるyohimbine(0.5,1.0,3.0 bg/kg)を静脈内投与し、回結腸運動と排便に対する効果を検討した。その結果、yohimbine投与により回腸と結腸に巨大伝播性収縮波(Giant Migrating Contraction : GMCs)が腓便と共に誘発されることが明かとなった。以前より、排便に伴ってGMCsが起こることは報告されていたが、それを薬物で誘発できることは報告されていなかった。同じイヌを用い、yohimbineによるGMCsと排便を抑制する拮抗剤について検討した。その結果、ムスカリン受容体拮抗剤のアトロピン、ニコチン受容体拮抗剤のヘキサメソニウム、によりGMCsのみならず結腸収縮全てが完全に抑制されることが判明した。セロトニン3受容体拮抗剤のオンダンセトロンは、yohimbineによるGMCsの誘発を抑制するが、抑制の程度としては、アトロピン、ヘキサメソニウムによりも明らかに弱かった。オピエイト受容体拮抗剤のナロキソン、ニューロキニン1受容体拮抗剤のFK224はyohimbineによるGMCs誘発効果に影響しなかった。次に、回結腸に分布する外来性神経を切離したイヌに対してyohimbineを投与したところ、GMCs、排便誘発効果は正常のイヌと同様に認められた。これらの結果から、yohimbineによるGMCs誘発効果はコリン受容体とセロトニン3受容体を介したものであり、外来性神経を切離しても反応が認められたことから、主としてコリン作動性節後神経に作用していると考えられた。このような結果は、GMCs抑制による下痢治療を考える際の重要な所見になると思われた。
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