研究概要 |
1.スキルス胃がんのように分化度の低い胃がんのマイクロアレイ解析には、LCMによるマイクロダイセクション法により集めた約100個の胃がん細胞由来の極微量RNAを増幅する技術が必要であり、T7 RNA polymerase-mediated RNA amplificationとadaplor ligation-mediated PCRを組み合わせたTALPAT法の開発および至適化を行った。胃がん培養細胞株100細胞由来の1ngのtotal RNAより10mgのcRNAが得られ,Affymetrix gene chip(12,629遺伝子)による解析において極めて高い再現性を示した。また胃がん、肝細胞がん、乳がん組織よりLCMにて得られた100〜1000細胞のRNAをTALPAT法にて増幅したcRNAは、マイクロアレイ解析に適用できた。 2.TALPAT法による手術材料を使ったスキルス胃がんの発現解析の検定のため、あらかじめスキルス胃がん細胞で選択的に発現する遺伝子を把握する必要がある。そこで細胞株を用いたサブトラクションとマイクロアレイ解析を行った。サブトラクションでは、スキルス胃がん細胞株で特異的に発現する既知遺伝子7個と未知遺伝子14個を得た。またAffymetrix gene chipによる解析では、スキルス胃がん細胞株で高発現する約130個の遺云子が得られた。 3.スキルス胃がんに特異的な遺伝子の探索過程において、洗浄腹水のRT-PCRにより微小な腹膜播種を術中診断する方法に応用できる遺伝子が得られた。Affymetrix gene chipを用い、8例の早期胃癌洗浄腹水で発現せず、胃癌培養細胞株12株と胃癌組織16例で発現する67遺伝子を得た。TALPAT法にて増幅し枯渇を防止した108例の洗浄腹水RNAにてRT-PCRを行い、この中から胃癌の微小な腹膜播種診断に使用しうる4遺伝子を得た。すでに報告されているCEAにCK-20と4つの遺伝子を組み合わせることにより、正診率96%と信頼性の高い診断系が確立された。
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