平成13年度に引き続いて腫瘍を処理し、初代培養細胞を用いた研究を行った。 サンプルからの培養は腫瘍の量の確保が困難なこともあり、確実性に欠いたが、cell lineとして確立可能であった細胞株について研究を行った。現在なお解析中であるが、腫瘍の悪性度、患者の予後と細胞動態には一定の相関関係が予想され、検討中である。術前放射線照射後の癌細胞については数回の分裂の後に、アポトーシスによると考えられる分裂停止と細胞死をきたす傾向があり、放射線照射後の具体的な細胞死のメカニズムを解析する上で興味深い所見と考えられる。早期培養株を用いた実験を計画中である。癌関連遺伝子と治療との関連については、既存のcell lineを用いた研究が中心となったが、p53蛋白と放射線感受性には相関が認められ、変異株はより放射線抵抗性が高い傾向が認められた。初代培養を用いた検討についてはなお症例数を増やして検討中であるが、細胞株のheterogeneityの問題や、前述のように放射線照射後に感受性の相違から腫瘍のpopulationが変化する可能性があり、腫瘍全体としての放射線感受性の術前評価をどのようにすすめるかにつき、今回の結果も含めた多因子の検討を必要になると考えられる。 全体を通じて、培養手順の確立が時間がかかった事もありなお検討中の項目が多いが、少量のサンプルを用いた培養法をほぼ確立したため、今後細胞株を用いた研究を発展的に行うことが可能であり、次年度以降も引き続き研究を継続させていく予定である。
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