検討1、癌ワクチン療法の適応症例の検討: 胃癌組織(n-93)を免疫染色しHER-2/neu発現を検討し、HLAtypeとの相関を検討した。また、免疫反応の指標としてTlL(腫瘍浸潤リンパ球)の浸潤程度をCD3抗体を用いた免疫染色にて半定量化した。その結果、胃癌においてHER-2/neu発現陽性例は18%に認められ、HLA-A2陽性例は23%であった。また、HER-2/neu発現程度とTlL浸潤程度との間に相関関係はなかった。 検討2、癌ワクチン療法(phase I臨床試験)=HLA-A2陽性、HER-2/neu陽性症例を対象として、同定したHER-2/nruペプチドをDC細胞にパルスして、患者皮内に投与する癌ワクチン療法を実施。ワクチン療法前後で、DTH反応、及び、peptide-specific CTL誘導能を検討した。ワクチン療法を実施した10例中6例で、ワクチン療法後にペプチド特異的CTLの誘導が可能となり、DTH反応は10例中3例で陽性化した。臨床画像的に1例でPR、1例にSDが認められた。 【考察と今後の展望】 (1)同定したHER-2/neuペプチドは免疫原性を有することが臨床試験で確認された。HER-2/neuは、胃癌に対する免疫反応を惹起させる有力な分子標的となりえる。 適応症例が限定されるため、他のHLA拘束性HER-2/neuペプチドの同定が必要である。
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