目的:Kupffer細胞(KC)の活性化がC型肝炎(肝炎)およびC型肝癌(肝癌)患者において肝腫瘍免疫と肝癌の発症進展に与える影響を検討した。方法:(1)肝炎、肝癌、健常人を対象にIL-18、IL-12の血清値を測定。また肝臓でのinterferon(IFN)-γとIL-10のmRNA発現を検討。(2)シグナル伝達に重要なT細胞受容体分子とされるCD3ζ分子発現とcaspase3活性を測定。(3)オキシダントストレスマーカーの4-hydroxynonenal(lipid peroxidation marker)と8-OHdG(DNA damage maker)を肝臓の評価し、KC分布と比較。(4)再発肝癌症例において初回手術後3年以内再発群と3年以降再発群に分類、オキシダントストレス発現との関連を検討。結果:血清IL-18値は肝炎、肝癌群で高値であり、ALT値と相関を認めた。肝癌群では異常高値の症例を認めた。血清IL12値は肝炎群で健常人と比較して有意に高値であり、さらに肝癌群ではより高値となっていた。さらに、IFN-γmRNAの発現とIL-12値に正相関を認めTh1サイトカイン優位に傾いていた。CD3ζ分子発現は肝癌群で有意に低下、caspase3活性は上昇しておりTT細胞は非活性化かつpre-apoptosisの状態であった。この変化は肝癌の臨床病期の進行にとともに増加していた。オキシダントストレスは肝炎、肝癌群で強くなりKCの分布と相関し、3年以内再発群で有意にオキシダントは増加していた。結論:肝炎ならびに肝癌においてKC細胞の過剰な活性化が認められ、肝臓での抗腫瘍免疫機構を抑制していた。また、活性化KCより産生されるオキシダントストレスがDNA障害を引き起こし易発癌状態となっていた。このように肝炎ウイルス感染によるKCの過剰な活性化は肝癌の発症と進展の危険因子である可能性が示唆された。
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