研究概要 |
ラット肝硬変モデルを用いて、肝部分切除に伴う肝虚血再灌流障害での肝微小循環に及ぼすEndothelin(ET)の役割と本病態におけるET受容体拮抗剤の効果について検討した。【方法】4%thioacetamide水溶液(400mg/kg)を週2回、10週間腹腔内投与して作成した肝硬変ラットを用いた。肝門部で60分連続して肝流入血行を遮断した後に肝左外側葉を切除するC群、10分間の肝流入血行遮断と5分間の解除を6回繰り返した後に肝左外側葉切除を行うI群、肝虚血30分前にET受容体拮抗剤(TAK-044,3mg/kg)を静注し、C群と同様の処置を行うTAK群の3群を作成し,比較した。【結果】再灌流3時間のI群、TAK群の血漿AST値は各々859IU/L、728IU/Lであり、C群の2112IU/Lに比し、有意に低かった。近赤外線時間分解スペクトロスコピー(浜松ホトニクス社)を用いた肝組織酸素飽和度(HSO_2)は、I群では虚血60分後から再灌流6時間目までC群に比し有意に高値を維持した。TAK群のHSO_2はC群に比べ、再灌流5分後から有意な改善がみられた。硬変肝組織のET-1値(41.6±2.2pg/g protein)は非硬変肝組織のET-1値(17.6±3.2pg/g protein)に比して、有意に高かった。C群、I群ともに再灌流時間とともに血漿および肝組織のET-1値は増加したが、C群に比しI群ではET-1値は有意に低かった。再灌流3時間での肝類洞内の鬱血はC群に比し、I群およびTAK群では軽微であった。【結語】硬変肝の肝切除においては肝微小循環の面から間歇的肝流入血行遮断法が連続的な流入血行遮断法より安全であることが判明した。ET受容体拮抗剤は肝硬変の虚血再灌流障害軽減に有用であると考えられた。
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