研究概要 |
【背景】近年生活の欧米化に伴って大腸癌の罹患率が急増している。大腸癌の予後規定因子のうち、もっとも重要なものとして、肝転移に代表される血行生転移が挙げられるが、これは血管新生の複雑なメカニズムによって多元的に制御されている。CD105は、新生血管に限局して発現し、既存の血管には発現しないため、新生血管密度の測定における有用性が報告されている。【目的】本研究では、大腸癌の臨床検体におけるVEGFやCD105の蛋白質及びmRNA発現と臨床病理学的因子との関連を検討した。 【対象と方法】大腸癌組織115例のパラフィン切片を用いて血管密度を測定し、(1)VEGFの蛋白質及びmRNA発現について検討した。(2)CD34,CD105の発現においては血管密度の高い群(high MVD)と低い群(low MVD)に分類して、臨床病理学的因子について両群を比較検討した。 【結果】(1)(1)リンパ節転移、肝転移、VEGFの発現について、high MVD群ではlow MVD群より有意に高頻度であった。また、VEGF発現例においては10例中7例に癌部mRNAの発現を認めたが、非発現例では7例中1例にしか発現がなく、VEGFの蛋白レベルとmRNAレベルの発現は有意に一致していた。(1)(2)高齢者大腸癌では比較的進行が遅いことに着目し、高齢者における血管新生能低下の原因としてVEGFが関与するか否かを検討したところ、VEGF発現率は75以上の高齢者群で有意に低かったが、年齢以外の因子と発現率との相関はなく、発現例同志の比較では、高齢者群の方が予後良好であった。(2)CD34,CD105とも、その発現と肝転移との間に有意な相関を認めた。CD105ではhigh群の生存率はlow群に比して有意に低かった。
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