研究概要 |
本研究の目的は食道癌に対してEvidence based-medicine (EBM)に基く医療体系を確立することである。 平成13年度は、まず食道癌の疫学的な調査を行い、若年者食道癌がより高い悪性度を有する可能性を示した(Nozoe et al. Ann Thorac Surg 2001)。食道癌の予後に関して、臨床的因子としての術中輸血の意義を示し(Nozoe et al. Cancer 2001,)、術前血中C-reactive protein値の上昇が予後規定因子であることを示した(Nozoe et al. Am J Surg2001)。また、表層拡大型表在癌の予後が比較的良好なことを明らかにした(Nozoe et al. Oncol Rep 2002)。一方、免疫組織学的研究を行い、細胞周期におけるG2/Mサイクリンであるcyclin B1の発現、特に核優位の発現が食道癌の独立した予後規定因子であることを示した(Nozoe et al. Clin Cancer Res in press)。 食道癌治療においては術前治療の効果が、そのまま術後の成績に大きく影響する。術前治療に感受性を示さない進行食道癌症例は術前治療を施行しなかった症例よりも有意に予後が不良であることを報告した(Nozoe et al. Oncol Rep 2001,第55回日本食道疾患研究会2001年7月)。すなわち、抗癌剤や放射線療法に感受性を示す症例を予知することが食道癌切除成績の向上には必須であることが示された(Nozoe et al. Jpn J.Hypertherm Oncol 2001,Nozoe et al. Surgery 2002)。 こうした一連の臨床病理学的検討は、食道癌に対する効果的な治療体系の確立に更なるEvidenceをもたらした。 平成14年度の研究指針としては1.Cyclin A, pRb2/p130など細胞周期関連遺伝子を中心に、食道癌の悪性度に関する研究を継続する。 2.Manganese superoxide dismutase (MnSOD)導入によるヒト癌遺伝子治療に関する基礎的研究を行う。食道癌細胞株(TE-1,-2,-3,-5,-10,-12,-13,-14)にMnSODを導入することにより、食道癌細胞の増殖能低下を図る。 3.MnSODアンチセンスを食道癌細胞株に導入することにより、抗癌剤の感受性の向上を図る。 これらは、将来的に実地臨床に応用できる可能性があり、EBMに基づくオーダーメード治療の確立に繋がる
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