研究概要 |
当教室では従来より癌部および非癌部組織における遺伝子上の違いに着目し、消化器癌を対象にDifferential display法や最近ではDNAマイクロアレイ法を用いて比較検討し癌の発生や進展のパラメーターとなりえるかを検討してきた。今回、新規シスタチン様肝転移関連遺伝子CMAPをマウス肝高転移株よりDifferential display法により発見しクローニングした。また、同株へのCMAP antisense DNAの誘導が実験的肝転移能を抑制すること、更に、ヒトCMAPの発現が多数のヒト悪性腫瘍株で認められる事からヒト腫瘍の悪性度にも関連する可能を明らかにした。これらの基礎実験データをもとにヒト大腸癌(83例)、肝細胞癌(65例)にてCMAPのmRNA発現量をリアルタイム定量PCRにより測定したところ、大腸癌肝転移例の癌部のCMAP値は非肝転移例より有意に高かった(研究発表:Utsunomiya T, et al. Clin Cancer Res 8, 2002)。一方、肝細胞癌においてもCMAP高発現例で肝内転移陽性例が有意に高頻度であった。また、術後再発形式の検討でCMAP高発現例で有意に肝内再発率が高かった。多変量解析でもCMAP高発現は独立した肝内再発危険因子であった。 そこで、CMAPを発現していない肝細胞癌株(Hep 3B, Hep G2)にCMAP遺伝子のTransfectantを作製し、それそれの導入株にてCMAP遺伝子が発現していることを確認した。CMAP遺伝子導入により特異的に変化する遺伝子群を明らかにするために、DNAマイクロアレイ(Agilent社、12,815遺伝子)を用いて解析を行った。現在、肝転移関連遺伝子群の抽出を試みている。更に、遺伝子導入株の細胞形態の変化、増殖能、転移能を解析中である。
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