研究概要 |
【目的】虚血再灌流障害に対するIschemic Preconditioning(IP)の臓器保護効果はこれまで多くの臓器において報告されており,ATP感受性Kチャンネルや,NO, Heat-Shock protein,サイトカイン等の関与が指摘されている.しかし,小腸のIP効果については未だ報告例が少なく十分な検討が行われていない.今回,犬を用い小腸虚血再灌流障害に対するIP効果およびその機序について実験的に検討した.【方法】体重8-13kgの雑種成犬を用いた.小腸を遊離後にSMA, SMVを遮断し120分間虚血したcontrol群(n=5),15分間のIP後に120分間虚血したIP群(n=5)を作成し,さらにcontrol群と同モデルにATP感受性Kチャンネル開口薬(Nicorandil)を投与したものをNic群(n=5),IP前にATP感受性Kチャンネル遮断薬(Glibenclamide)を投与したものをGli群(n=5)とし、再灌流後の門脈血中CPK, Lactate, TNF-αの動態と,腸間粘膜ph(pHi),CPKは再灌流120分後,Lactateは再灌流5分後,240分後に有意に良好な値を示し,また,pHiも虚血120分後,再灌流60分,120分,240分後で有意に良好な値を示した.Parkらの分類にもとずく小腸の組織学的障害の評価では再灌流120分後のIP群はGrade4が3例,Grade5が2例であったのに対し,control群はGrade5が2例,Grade6が3例で,IP群はcontrol群より組織学的障害も軽度であった.またNic群は.control群に比べpHiで再灌流60分,240分後に有意に良好な値を示し,IP群はGli群に良好な値を示した【まとめ】IPは小腸虚血再灌流障害の軽減に有効で、その機序としてATP感受性Kチャンネルの関与が示唆された.
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