研究概要 |
本研究の目的は骨髄幹細胞の肝増殖への関与の有無を明らかにし,新しい肝不全治療法を確立することにある。平成13年度は,肝不全モデルに対する骨髄移植に先立ち,骨髄移植マウスにおける骨髄からの細胞供給と分化誘導を検討するために,放射線照射マウスに骨髄移植を行い,FACS scanによるキメリズム,蛍光実体顕微鏡・免疫染色による分化誘導状態を観察した。 【材料と方法】B6マウスに7.5Gy,9.5Gy,12Gy放射線照射後の生存率を検討した。次に,骨髄移植細胞数を決定するために,B6マウスに12Gy放射線照射後,グリーンマウス由来骨髄細胞を移植し生存率を検討した。さらにB6マウスに12Gy放射線照射後,グリーンマウスの骨髄細胞1x10^6個を移植し,移植後7日,4週間,12週間後における骨髄キメリズム,骨髄,肝,膵,小腸,腎,肺,脾における骨髄からの細胞供給とその分化誘導状態を検討した。 【結果】7.5Gy,9.5Gy,12Gy照射後の生存率はそれぞれ100%,100%,9%であった。また,12Gy放射線照射後に骨髄細胞1x10^5個,1x10^6個,1x10^7個移植後の1ヶ月生存率はそれぞれ70%,100%,91%であった。以上の結果から照射線量を12Gy,移植細胞数を1x10^6個とした。この条件において移植後7日,4週,12週における骨髄,脾,末梢血におけるキメラ率はそれぞれ7日;40%,23.5%,6.34%,4週;82.6%,66.2%,83.4%,12週;72%,79.9%,70.3%であった。骨髄キメラ率の上昇に伴い肝,膵,小腸,肺,腎の各臓器にGFP陽性の骨髄由来細胞が出現し,特に肺および小腸で多く認められた。これらの細胞の多くはリンパ球あるいはマクロファージであったが,肝および腎で血管内皮細胞への分化の可能性が示唆された。上皮細胞への分化傾向については現在検討中である。
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