研究概要 |
本研究の目的は骨髄幹細胞の肝増殖への関与の有無を明らかにし,新しい肝不全治療法を確立することにある。平成14年度は,12Gyの放射線照射を行ったマウスに骨髄移植を行い,FACS scanによるキメリズム成立を確認後,蛍光実体顕微鏡・免疫染色による分化誘導状態を観察した。さらに70%肝切除モデルにおける骨髄細胞の誘導について検討した。 【材料と方法】B6マウスに12Gy放射線照射後,グリーンマウスの骨髄細胞1x10^6個を移植しキメラマウスを作成した。このキメラマウスにおける全身各臓器への骨髄由来細胞の分布を検討するために移植後7日,4週間,12週間後における骨髄キメリズム,骨髄,肝,膵,小腸,腎,肺,脾における骨髄からの細胞供給とその分化誘導状態を検討した。細胞供給は主に免疫染色で検討し上皮,血管内皮,マクロファージ,リンパ球,線維芽細胞などのマーカーとしてサイトケラチン,F8,F4/80,CD3,CD8,FSP-1などを用いた。 【結果】移植後7日,4週,12週における骨髄,脾,末梢血におけるキメラ率はそれぞれ7日;40%,23.5%,6.34%,4週;82.6%,66.2%,83.4%,12週;72%,79.9%,70.3%であった。骨髄キメラ率の上昇に伴い肝,膵,小腸,肺,腎の各臓器にGFP陽性の骨髄由来細胞が出現し,特に肺および小腸で多く認められた。これらのGFP陽性細胞のうちサイトケラチン陽性となった細胞は極少数で,多くの細胞はリンパ球,マクロファージ,あるいは線維芽細胞であった。肝および腎では血管内皮細胞への分化の可能性が示唆された。また70%肝切除モデルでは血管内皮細胞が骨髄から供給されておりこれらの細胞群の各臓器への供給におけるマクロファージ系細胞の役割について検討中である。
|