研究概要 |
目的:門脈結紮術後の腫大した非塞栓葉は、同じ容積の正常肝と比較して過大肝切除に対して耐術しやすく機能的に有利であるかを検討した。 方法:Wistar系雄性ラットを用い、2つの90%肝切除群を作成した。Portal vein ligation(PL)群;初回手術として左葉、正中葉の70%門脈結紮術を施行後、4日目に尾状葉後葉(5%)が2倍(10%)に腫大した時点で、後葉のみを温存する90%肝切除(10%の腫大肝)を施行した。Sham群;sham手術施行後4日目に90%肝切除(10%正常残肝)を施行した。両群で以下の検討を行った。1)術後生存率、肝再生率、2)組織中PCNA labeling index、生化学検査、肝組織中ATP濃度、3)cDNA chip(RIKEN mouse 20K array)を用いた遺伝子発現プロファイルを比較した。 結果:1)肝切除後96時間生存率は、PL群がSham群と比較して有意に良好であった(56.3% vs 26.7,P<0.05)。2)肝再生率は肝切除後24時間までPL群の方が良好であった。またPCNA labeling indexは肝切除後24時間でPL群のほうが高値であった(20% vs 0%,P<0.05)。またPL群でT.Bilが有意に低値であり、また肝組織中ATP濃度は高値を示した。3)遺伝子発現を比較すると、肝再生関連遺伝子ではPL群で、細胞増殖を促進させるcyclin B,D1,G1および,PCNAなどが高発現し、抑制するp21が低発現であった。また、エネルギー代謝関連遺伝子では、ATP synthaseなどのエネルギー合成を促進させる酵素の高発現を認めた。 結語:門脈結紮術後の腫大肝は過大肝切除に対し、同容量の正常間よりも機能的に有利であると考えられた。その理由は、手術時から再生がすでに始まっており、エネルギー代謝も亢進しているためと考えられた。
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