研究概要 |
これまで膵癌のムチン分画を免疫原として作製されたキメラNd2抗体が、in vitroおよびin vivoにおいて膵癌細胞株に対し、単核球ならびに好中球をエフェクター細胞として抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を誘導し、抗腫瘍効果を示すことが判明しており、近年乳癌、悪性リンパ腫を中心とした抗体治療と同様に、極めて予後不良な膵癌に対するしい治療戦略として免疫ターゲット療法への臨床応用の可能性が示唆されている。今回、さらに抗体治療において、ADCC以外に抗体を介した抗腫瘍効果に作用する免疫活性の一因を担っている補体依存性細胞障害活性(CDC)誘導の有無を検討した。In vitro,CDC活性は、ヒト膵癌細胞株SW1990、1.5×10^5個/25μlを96well microplateに調整し、キメラNd2を0,0.1,0.2,0.5,1.0μg/mlを添加、さらに補体として15倍希釈の健常人ヒト血清を25μl添加し、37℃,45分間インキュベート反応させ、その後癌細胞をトリパンブルーにて染色、検鏡し、生細胞数および死細胞数をそれぞれカウント、CDC活性を%lysis=(死細胞数/死細胞数+生細胞数)×100で算出し、検討した。その結果、キメラNd2の濃度依存性にSW1990の細胞障害は増強し、補体存在下コントロールIgG1,1μg/ml添加での4.3±0.6%lysisに対し、キメラNd2,1μg/ml添加では15.4±0.7%lysisと有意に(P<0.05)強い細胞障害を示した。また56℃,30分にて補体を不活ヒしキメラNd2の添加では、CDC活性は認められなかった。以上の結果から、キメラNd2はCDC活性も誘導可能であることが明らかとなり、in vivoでの抗腫瘍作用の一因を担っていると考えられた。これらの成果から本抗体が膵癌の抗体治療薬として、その応用性が高いことが判明し、さらにより臨床応用に適した低免疫原性であるヒト化抗体の開発により膵癌の新しい治療戦略の一つとして応用できる可能性が示唆された。
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