急性壊死性膵炎では膵および膵周囲の感染を合併し重症化しやすい。この易感染性は免疫能の低下に起因している可能性がある。前年度研究で、マウス急性膵炎モデルを用いて、壊死性膵炎では浮腫性膵炎と比べ、腹腔浸出好中球が減少し、腹腔浸出好中球のオプソニンレセプター(CD11bおよびCD32/16)の発現が低下していることを示した。Granulocyte colony-stimulating factor(G-CSF)は好中球の増殖、成熟および機能亢進の作用を有する。今年度は、急性壊死性膵炎時の感染防御機能の保持・改善をめざした治療法の確立のために、マウス急性壊死性膵炎モデルにG-CSFを投与し、末梢血および腹腔浸出液中の好中球のCD11b、CD32/16の発現を検討した。 Balb/cマウスを用い、caerulein 50μg/kg体重を1時間毎に13回皮下投与し急性壊死性膵炎を作成した(膵炎群;n=18)。さらに膵炎+G-CSF群(n=18)では、膵炎作成3日間前から12時間毎にG-CSF(50μg/kg体重)を皮下投与した。各群でcaemlein投与前、最終投与6時間後、24時間後に犠牲解剖し(各n=6)、末梢血、腹腔浸出液、膵組織を採取した。FACScanを用いフローサイトメトリーにより、末梢血および腹腔浸出液中の好中球のCD11b、CD32/16の発現を検討した。G-CSF投与により末梢血および腹腔浸出液中の好中球のCD11bおよびCD32/16の発現亢進を認めた。 急性壊死性膵炎においてG-CSF投与が局所感染防御能を改善する可能性が示唆された。
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