研究概要 |
NFkBの活性化の手段としてIkBのmRNAを不活化させるアンチセンス法を採用し,そのIkB antisenseを導入した組み換えアデノウィルスIkB antisense cDNAを発現するアデノウィルスベクターを作製した.IkB senseを遺伝子導入した組み換えアデノウィルスはいくつかの論文にて利用され,また我々もそれを得ているが,antisenseはあまり報告がなく,自らで作製する必要があった.遺伝子導入法としてCOS-TPC法を用いて,組み換えアデノウィルスを作製し大量精製の後に超遠心にて分離,抽出した. 完成したアデノウィルスを実際にラットに感染させる前にin vitroにて作用発現の有無と力価を確認した.培養細胞として4種,すなわちヒト肝癌細胞Hep-G2,ヒト腎癌細胞2種類(この2種の細胞は定常的にNFkBがそれぞれ比較的活性化されているものと活性化されていないものとが既にわかっている),およびfibroblast(比較的正常細胞に近い)の細胞株を選択し,これらに対し感染実験を行った.Mercury Pathway Profiling systemを用いてNFkBの活性化をluciferase活性にて測定し,感染した細胞にてNFkBが活性化されていることを確認した. また,力価測定として50% Tissue culture infectious dose(TCID_<50>)法を用い,作製したアデノウィルスの力価を確認した. 次に実際にラットにアデノウィルスを感染させ,まず単に感染ラットにおける影響をAdex LacZとの比較にて検討した.ここでわかったことはアデノウィルス感染後実際にNFkBが発現されるまでに時間差が生じているようで,現在,Gel shift assayによってその遺伝子発現までの時間差を測定している. 今までの概念として,各種細胞において定常時のNFkBの活性状態についてはあまり議論されていなかったが,ある種の外部刺激に対してシグナル伝達経路が活性化される際,定常時のNfkBが比較的活性化されているときはNFkBの活性化による各種遺伝子発現が押さえられ,逆に定常時のNFkB活性が低い細胞はNFkB活性化による遺伝子発現が強くおこるという実験結果がある.この結果から,虚血再灌流前のNFkB発現状態の相違によって虚血再灌流障害の程度が異なるのではないかという仮説を立て,実際にin vivoにて証明しようと試みている.
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