研究概要 |
本研究では(1)ビーグル犬を用いて肝切除と門脈あるいは下大静脈合併切除再建を行い、門脈、下大静脈に挿入した代用血管を経時的に観察し、同種血管、人工血管について閉塞などの病態について肝切除の影響を比較検討すること、(2)また予想される早期閉塞については、人工血管を内皮化し、その有用性を検討すること、(3)さらにグラフト上の内皮細胞に肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子を導入し、HGFの肝細胞増殖、細胞傷害抑制、細胞外マトリックス融解、血管新生などの作用を期待して肝切除後の肝再生促進効果をみるとともにグラフト開存や内膜肥厚、側副血行に対する効果を観察すること、を目的として実験的研究を計画したが、平成13年度はHGFアデノウイルスベクターの大量調整を行い、イヌ頚静脈より採取した内皮細胞にHGFアデノウイルスベクターを感染させ、ベクター濃度による細胞毒性と蛋白発現をみて至適濃度を検討したところ、至適濃度としては細胞1個あたり50PFUであると結論された。平成14年度は内皮細胞の培養とともにHGFアデノウイルスベクターの大量調整を行い、グラフトの内皮化を行い、肝右葉とともに下大静脈を切除し、内皮化したグラフトで置換した。5頭のビーグル犬を用いて行ったが、2頭生存したが、3頭は1週以内に死亡した。死因は過大侵襲、出血で、生存した2頭を4週後に犠死させ、肝の再生とグラフトを観察したが、グラフト上に内皮細胞は存在し、血栓の付着はみられなかった。また、肝の再生については内皮化しないグラフト(4頭)と比べても著変はなかった。経過中、術後3,7,10,14日に血中のHGFを測定したが、感度以下で測定できなかった。グラフト上の内皮細胞だけにHGF遺伝子を導入しても活性を示す遺伝子発現量には至らないのではないかと推察された。
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