ヒト癌抗原に対するT細胞の特異的免疫応答におけるTCRVβレパトア及びCDR3を解析し、生体内における癌特異的CTL前駆細胞の動態を評価する研究を進めている。膵臓癌、胆管細胞癌、胆嚢癌、大腸癌外科切除標本の免疫組織化学染色による癌抗原の検索においてMUC1、CEA、HER2の異常発現を高率に認め、MUC1、CEA、HER2の合成ペプチドをパルスした樹状細胞を皮下接種する癌ワクチン療法の前後におけるTCRVβレパトアの変動をFACSにて解析し、特定のTCRVβレパトアが抗原ペプチドごとに増加する傾向を認めた。食道癌、胃癌、肝細胞癌切除標本から採取したtotal RNAよりRT-PCRを行いMAGE-1、MAGE-3抗原の有無を検索し、MAGE抗原陽性癌症例に対して合成MAGEペプチドをパルスした樹状細胞ワクチンを皮下接種し、その前後で末梢血リンパ球のTCRVβレパトアの変動をFACSにて解析した。さらにHLA-A2402のMHCテトラマーを作成し、HLA-A2402結合性MAGEペプチドを結合させて、患者末梢血中のMAGE抗原特異的CTL precursorを検索している。これらの癌ワクチン実施患者の末梢血リンパ球をin vitroにて抗CD3抗体、ペプチドパルス樹状細胞、ペプチド結合テトラマーにて再刺激し、IFNγ産生細胞をELISPOTにて解析した。さらに癌ワクチン投与患者の末梢血リンパ球をペプチド提示樹状細胞にて再度刺激し続けてそれぞれのCTLクローンを作成し、TCRVβの検索およびMHCテトラマー解析、ELISPOT解析を進めている。
|