研究概要 |
ゲノム解析プロジェクトやDNAアレイの発達によって、個々の疾患に関する染色体や遺伝子発現の特徴が明らかにされつつある。本学ではgenome-wide gene expression analysisの一つであるoligonucleotide array-based technologyを用いたGene Chip Expression Analysis Systemを入手し、浅井と石井らは大腸癌や大腸癌celllineの遺伝子発現解析を行った。さらに潰瘍性大腸炎患者大腸粘膜における遺伝子発現の特徴を検討するために同様にGene Chip Expression Analysisを行った。重症、難治潰瘍性大腸炎7例に対し大腸全摘術を行い、摘出大腸より大腸粘膜を採取し、m-RNAを抽出した。その後cDNAを精製し、一定のサイズに断片化後、chipに注入、ハイブリダイゼーションを行い、chipの情報をコンピューターに取り込みデータの処理、解析を施行した。潰瘍性大腸炎群のgeneの発現強度を算定し、対照群(大腸癌大腸切除患者3例の大腸粘膜)と比較した。その結果、潰瘍性大腸炎群のgeneの発現強度が対照群より3倍以上変化し、有意差を得たgeneは28個で、うち25個のgeneは潰瘍性大腸炎群が対照群より3倍以上強く発現していた。さらに潰瘍性大腸炎群が10倍以上強く発現を示したgeneはosteopontinとMMP-12であった。最近osteopontinはSLEやRAの病因と密接な関係がある(Hum. Mutat.19:459,2002.,Proc.Natl. Acad. Sci. USA.99:4556,2002.)といわれているので、潰瘍性大腸炎の病因究明において重要であると考える。
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