研究概要 |
食道扁平上皮癌に対する放射線照射効果をジーンフィルターにより解析という研究課題に対して、我々は、日本医科大学老人病研究所の協力により研究設備を利用して、初年度は以下の実験、解析を行ない得た。まず、準備した、高分化、中分化、低分化の3種類の食道扁平上皮癌培養細胞群に対して、それぞれに2,4,8グレイと3段階に放射線照射線量を変えて照射をおこなった。次に、それぞれ放射総線量の異なる細胞群より、0分、15分、30分照射後経過した細胞群から各々、RNAを抽出した。さらに、抽出した各々のRNAにラジオアイソトープ(P33)をラベルし、ジーンフィルター(GF211)を利用してハイブリダイゼイションをおこなった。その結果、ハイブリダイゼイションされた放射線総量の異なった各細胞群の遺伝子発現パターンの変化から、今回、今までに報告のなかった幾つかの変化が認められた。この変化は、食道扁平上皮癌の放射線照射治療効果、及び、放射線耐性に何らかの形において関与する可能性があるのではないかと想像される。現在、15分値のみの解析が終了した段階であり、今後さらに0分、30分値の解析を進めていくことで、さらなる食道扁平上皮癌に対する放射線照射効果における新たな遺伝子変化が認められる可能性が考えられる。同時に、遺伝子変化の認められた放射線照射後15分値の結果の再現性、及び裏付けのために研究を継続中である。 現在までに認められた遺伝子群は次の通りである。 SCYA5,COX6C,GAPD,SMARCD2,MAPK8,CPNE1,MNPEP.CAPZA 新年度は放射線照射後の経時的変化をより詳細に把握すべく準備中である。その結果から放射線照射が癌細胞の代謝系に及ぼす影響を理解し、よりよい治療の方策を見出す予定である。
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