研究概要 |
我々は、ヒト大腸癌細胞株SW480から1-1ras1000細胞を受容細胞とする発現クローニング法により転移誘導活性をもつgenomic DNAを分離し、その産物がC末欠失型(166-201を欠失)D4GDI(LyGDI/RhoGDI2)であることを明らかにし、さらに、このC末欠失型D4GDI(ΔC-D4GDI)を1-1ras1000細胞に強制発現させると転移能を獲得することを明らかにしてきた。本研究で我々は、ΔC-D4GDIは細胞膜に局在し、細胞骨格とassociateし、RhoA, Rac1, Cdc42, Radixin, Moesinとcopurifyされることを明らかにした。また、細胞膜に局在するΔC-D4GDIが活性化型Rac1と結合しており、ΔC-D4GDI発現細胞では実際にin vitro浸潤能が亢進していることを明らかにした。 D4GDIやRhoGDI1はRhoファミリーのGTPaseを不活化型として細胞質にプールし、これらのGTPaseを主に負に制御する分子であると認識されている。しかし、我々の結果はD4GDIがGTPaseを細胞膜へリクルートし、ERMタンパクや細胞骨格を介したシグナル伝達の場に活性化型として繋ぎ止め、Rhoファミリーによるシグナル伝達の正の制御に積極的に関与していることを示すものであり、これがΔC-D4GDIによる転移誘導機構のひとつであることが示唆された。 SW480を含めた8種類の大腸癌細胞株では野生型D4GDIのみが発現しており、ΔC-D4GDIは発現していなかったが、どの細胞株でもD4GDIは分画された細胞膜に局在していた。現在、大腸癌細胞におけるD4GDIの細胞膜局在と悪性化進展の関連をさらに検討中である。
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