潰瘍性大腸炎とクローン病における各種サイトカインとエンドセリン産生反応について

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13671360
• 研究機関: 川崎医科大学
• 研究代表者: 角田 司 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00110841)
• 研究分担者: 浦上 淳 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70319979) ; 木元 正利 川崎医科大学, 医学部, 助教授 (50153226)
• キーワード: 潰瘍性大腸炎(UC) / Crohn病(CD) / 血管内皮細胞増殖因子(VEGF) / 線維芽細胞増殖因子(b-FGF) / エンドセリン-1(ET-1)

研究概要

潰瘍性大腸炎(UC)の11例(活動期6例、非活動期5例)とCrohn病(CD)の11例(活動期6例、非活動期5例)について、血清中の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(b-FGF)および血漿中のエンドセリン-1(ET-1)をELISA法を用いて測定した。コントロールは喘息患者の10名と大腸憩室患者の10名を用いた。
結果:1.血清VEGF値(pg/ml):活動期UC;659.8±181.0、活動期CD;740.0±182.3、コントロールの喘息患者;193.7±58.7、大腸憩室患者;199.6±59.7であった。2.血清b-FGF値(pg/ml):活動期UC;9.2±1.9、活動期CD;9.1±1.5、喘息患者;5.0±0、大腸憩室患者;5.0±0であった。3.血漿ET-1値(pg/ml):UC;127.0士47.0、CD:167.3±35.1、喘息患者:38.5±23.8、大腸憩室患者;40.5±25.6であった。4.非活動期UCとCDにおいて、VEGF、b-FGFの値はコントロールとほぼ同様の値であったが、ET-1はUCで60±19.0pg/ml、CDで62.4±26.0pg/mlを示した。これらの結果について統計学的有意差検定を行ったところ、(1)コントロールの喘息患者と大腸憩室患者間で、VEGF、b-FGF、ET-1の値に有意差はなかった。(2)活動期のUCとCDにおいてはVEGF、b-FGF、ET-1の値が喘息患者と大腸憩室患者のコントロールに比べ有意に高値であった(p<0.01)。(3)活動期のUCとCDにおいて、VEGFとb-FGFの値は、非活動期のそれに比べ有意に高値であった(p<0.01)。(4)UCとCDにおいて、VEFG、b-FGFの相関係数は0.87(p<0.0001)、VEGFとET-1の相関係数は0.70(p<0.0001)、b-FGFとET-1の相関係数は0.66(p<0.0001)であり、活動期のVEGF、b-FGF、ET-1の三者間に有意な相関を認めた。
結論:UCやCD患者の血中にはVEFGやb-FGFなどのサイトカインと血管作動物質のET-1が高値になっており、これらの相互作用がUCやCDの腸管虚血性病変形成に関与している可能性が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Iki Katsumichi, Tsunoda Tsukasa, et al.: "Primary adenocarcinoma of the duodenun demonstrated by ultrasonography"J. Gastroenterol.. 36・3. 195-199 (2001)
• [文献書誌] Kanazawa Shigeo, Tsunoda Tsukasa, et al.: "Intralobar pulmonary sequestration supplied by multiple anomalous arteries : Report of a case"Surg. Today. 31. 701-704 (2001)
• [文献書誌] Kubozoe Tadahiko, Tsunoda Tsukasa, et al.: "Absence of β-catenin gene mutations in pancreatic duct lesions induced by N-nitrosobis (2-oxopropyl) amine in hamsters"Cancer Letters. 168. 1-6 (2001)
• [文献書誌] Kanazawa Shigeo, Tsunoda Tsukasa, et al.: "VEGF, basic-FGF, and TGF-β in Crohn's disease and ulcerative colitis : a novel mechanism of chronic intestinal inflammation"Am. J. Gastroenterol.. 96・3. 823-828 (2001)
• [文献書誌] Iki Katsumichi, Tsunoda Tsukasa, et al.: "Preoperative diagnosis of acute appendiceal diverticulitis by ultrasonography"Surgery. 130・1. 87-89 (2001)
• [文献書誌] 山下和城, 角田 司, 他: "高齢者(75歳以上)大腸癌手術症例の臨床病理学的検討-41歳以上50歳以下の大腸癌症例と比較して-"日臨外会誌. 62・8. 1830-1836 (2001)
• [文献書誌] 垂水研一, 角田 司, 他: "von Recklinghausen病に合併した空腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)の1例"胃と腸. 36・7. 934-936 (2001)
• [文献書誌] 三井 康裕, 角田 司, 他: "急性膵炎を契機に発見された膵管内乳頭腫瘍の1例"川崎医会誌. 27・2. 139-143 (2001)
• [文献書誌] 伊木勝道, 角田 司, 他: "各論6. 膵疾患5. 膵内分泌腫瘍. 専門医のための消化器外科レビュー. -最新主要文献と解説2001-"総合医学社. 5 (2001)