抗原提示能を担う樹状細胞を活性化させ、腫瘍に対する免疫応答を強化させるため、樹状細胞上に存在するCD40分子を、そのリガンド分子CD40Lを腫瘍細胞に発現させることによって刺激させた。CD40L遺伝子導入細胞の中で、主要組織適合抗原の発現が、親株と変わらない細胞を選択し、これを同系マウスの皮下に接種し抗腫瘍効果が惹起されるかどうかを検討した。その結果、(1)CD40L遺伝子導入細胞は腫瘍を形成したものの、その増殖能は親株のそれと比較して著しく低下していた。(2)一部の遺伝子導入細胞は、当初より腫瘍を形成することなく、完全に拒絶された。(3)遺伝子導入細胞を拒絶した同系マウスには、抗原特異的な獲得免疫が誘導されていた。但しヌードマウスに接種すると腫瘍は形成され、その増殖速度は親株腫瘍のそれと同じであった。実際に樹状細胞が腫瘍上のCD40L分子と反応するかどうかを確認するために、マウス骨髄細胞よりIL-4とGM-CSFを用いて、樹状細胞を単離し、その上でCD40L遺伝子導入細胞あるいは親株細胞と共に培養した。その結果(1)遺伝子導入細胞と樹状細胞はクラスターを形成したが、親株と共培養した樹状細胞ではこのクラスター形成は見られなかった。(2)遺伝子導入細胞と共培養した後の樹状細胞では、主要組織適合抗原クラスII分子の発現、また樹状細胞の活性化の指標であるCD86分子の発現も、共培養前と比較して高まっていた。(3)遺伝子導入細胞と共培養した樹状細胞でIL-12およびIL-23の発現が検出され、培養上清中にこれらが分泌されていた。(4)IL-18、Mig遺伝子の発現もCD40L遺伝子導入細胞と共培養した場合のみ観察された。すなわち樹状細胞は腫瘍細胞上のCD40L分子によって活性化され、活性化後に分泌されるサイトカイン、ケモカインによって細胞性免疫応答が強化されることが示唆された。
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