研究概要 |
組織因子(以下TF)は外因系凝固反応を起こす因子であるが,血管新生や浸潤など癌転移に関連した活性を有することが明らかになってきた.しかしその役割は十分に検討されていない.平成13年度は臨床例の検討を中心に行った.肺癌腫瘍組織のTF発現量を定量PCR法で測定して臨床病理学的因子と比較検討した. 【方法】肺癌患者42例の原発腫瘍からRNAを抽出して,リアルタイムPCR測定器を用いて原発腫瘍内のTFのmRNA量を測定した.【結果】肺癌組織で脈管浸潤を認める群のTF発現量(3.73E-4±1.96E-4)は,脈管浸潤を認めない群のTF発現量(1.45E-4±O.87E-4)と比較して有意に高値を示した(P=0.0211).一方,リンパ管浸潤因子,リンパ節転移因子,胸膜浸潤の因子,病理病期ではTF発現量に有意差を認めなかった.また腫瘍最大径とTF発現量の間にも相関関係を認めなかった.【結論】肺癌腫瘍組織のTFは癌細胞の血管内浸潤に関連すると推察された.平成14年度はこの結果に基づいて癌細胞の血管外遊走モデルを作成して,TFの癌細胞の血管内浸潤の分子メカニズムを解明する予定である.
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