研究概要 |
背景、目的:急性炎症における好中球の炎症部位浸潤についてはtransmigrationがkey stepであることが知られている.HUVEC及びpolycarbonate membrane chamberによる血管外遊走モデルを用い,血管内皮細胞の能動的機能からみた好中球血管外遊走、特にRho, Rho kinaseを介したFocal adhesion(FA),特にPaxillinのtyrosinリン酸化に関する経路について解析した. 方法:C3 transferase(Rho inhibitor), Y-27632(Rho kinase inhibitor), ML-7(MLCK inhibitor), vehicleの血管内皮細胞前処置後transmigration assayを施行し,好中球の血管内皮細胞下への遊走の際における1)遊走した好中球のカウント、2)蛍光染色を用いた血管内皮細胞内F-actin, MyosinIIの分布変化、3)免疫沈降法を用いた血管内皮細胞内MLC, Paxillinのリン酸化を解析した. 結果:transmigration assayにおいて、好中球の血管内皮細胞下への遊走、その際の血管内皮細胞内F-actin, Myosin IIの活性化、血管内皮細胞内MLCリン酸化が確認された.また血管内皮細胞のみの各抑制剤前処置によって,好中球の血管内皮細胞下への遊走、血管内皮細胞内F-actin, Myosin IIの活性化、血管内皮細胞内MLCリン酸化が有意に抑制された.一方で血管内皮細胞のThrombin刺激により、stress fiberが形成され、その先端へのPaxillinのrearrangement、およびtyrosineリン酸化が生じるが、RhoやRho kinase inhibitor前処置で、それらの変化が抑制された.またpreliminaryであるが好中球遊走の際にFAリン酸化も生じ、Rho,Rho kinase inhibitor前処置により抑制された. 結語:血管内皮細胞内Rho, Rho kinaseを介した情報伝達経路はFAリン酸化も介し好中球血管外遊走において重要な役割を担っていると考えられた. 平成14年度に得られた以上の結果でRho, Rho kinaseを介した新しい好中球血管外遊走の情報伝達経路に関しては論文として発表した(J. Leuko. Biol. 72:829-836,2002)。また今後FAの関与を強調するためにはFA単独の抑制実験がさらに必要と思われ、FAリン酸化に関する研究は追加実験後、次年度以降に報告予定である.
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