今年度は、赤外線凝固による心房アブレーションの効果と、凍結凝固による心房アブレーションの効果を、犬を使った実験で確認した。凍結凝固に関しては、臨床応用を5例に適応し、現在良好な結果を得ている。 赤外線凝固により、犬においては心房のアブレーションが心拍動下で可能であり、電気的ブロック作成も心拍動下において全ての場所;左心耳、右心耳、左心房自由壁、肺静脈において可能であることが確認された。しかし、凝固組織が萎縮するのが欠点であり、特に肺静脈においては狭窄あるいは閉塞をきたす可能性があるために臨床応用はこの部位を避けるべきであると考えている。また、左心房後壁のアブレーション時にも、海外において高周波アブレーション時に食道穿孔をきたし縦隔炎を起したとの報告があり、同じ熱凝固を本質とする本法では、臨床応用に際して注意が必要である。 凍結凝固においては、新たに開発したフック型プローブを用いて実験した結果、肺静脈電位は消失し電気的隔離に成功した。しかし、心房自由壁にたいしては心拍動下では無効なことも判明し、何らかの工夫が必要であると考えられる。臨床においては人工心肺下に左心房自由壁を心房切開なしに心外膜側から凝固し、電気生理学的に隔離されたことを証明した。本法により、術後数ケ月から1年あまり経った現在。5例中4例が心房細動から洞調律に、1例が粗動になっている。
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