研究概要 |
胸腺上皮性腫瘍(胸腺腫および胸腺癌)は胸腺由来の代表的腫瘍で、臨床の場で遭遇する主要な縦隔腫瘍の一つである。これらの腫瘍の病理組織像は多彩で、均一な組織亜型ごとの遺伝子異常の解析いまだ十分になされていない。World Health Organization(WHO)が中心となって1999年にまとめられた胸腺上皮性腫瘍の新たな分類が、腫瘍学的性質を反映することはすでに明らかにされている。当教室においてもこの新たな病理分類に従って胸腺上皮性腫瘍の検討を行ったところ、WHO病理分類のType AからType Cに進むにつれて腫瘍の病期が上昇し、この分類は浸潤能をよく反映することを確認された。(Okumura M, et al. Clinical and functional significance of WHO classification on human thymic epithelial neoplasm: A study of consecutive 146 tumors. American Journal of Strgical pathology 25 :103-110, 2001)。 このように、WHO病理分類が腫瘍の悪性度の指標になるということは、この分類が何らかの腫瘍遺伝子・腫瘍抑制遺伝子の発現異常のスペクトルを反映している可能性を示唆している。そこで現在われわれは、WHO病理分類の各typeの腫瘍細胞と正常胸腺上皮細胞において遺伝子発現を比較することにより、胸腺上皮性腫瘍の発生・生物学的悪性度に関与する遺伝子を解明することをさらに検討している。そのために、胸腺上皮性腫瘍の腫瘍細胞由来のmRNAを材料として遺伝子発現の解析を行っている。既に、胸腺あるいは胸腺腫の初代培養上皮細胞由来RNAが既に25例から得られており、今後これらをもとに、GeneChipを用いて、多数の遺伝子の発現を解析する予定である。
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