研究概要 |
以下の4つのサンプルを用いて、C-1, C-2サンプルに発現誘導のある遺伝子探索をRFDD-PCR法を用いて行った。 A:無処置WKYラット心(pooled from 6 rats) B:再移植14日、3日目再移植WKY心(非冠動脈硬化群: pooled from 6 rats) C-1:再移植14日、5日目再移植WKY心(冠動脈硬化群: pooled from 3 rats) C-2:再移植14日、5日目再移植WKY心(冠動脈硬化群: pooled from another 3 rats) 計24バンドがA, Bには検出されないか弱い発現を見るのみで、かつC-1, C-2の両方により強い発現を示した。差の大きい12バンドを選択し、再増幅したところ11バンドが再増幅された。核酸配列を決定しGeneBankなどの公的遺伝子データベースに対してHomology searchを行ったところ、既知遺伝子と全く相同性が無く新規遺伝子と考えられるもの(2個)、既知遺伝子と有意の相同性を持つ未知遺伝子(4個)、既知遺伝子(4個)とArtifactと考えられるribosomal RNA断片に分類された。 同定した10個の遺伝子に対してreal-time RT-PCR法による遺伝子発現測定系を作成し、再移植後1,14,30,60日後の移植心を用いて、各遺伝子発現が動脈硬化症の発生と時間的に相関するかをさらに検討した。その結果、移植後動脈硬化症と関連あると判定された遺伝子は、2つの既知遺伝子: CD11bとMHC class II抗原であった。 心再移植法による移植後動脈硬化症に関与する遺伝子をRFDD法によって同定する試みは、技術的には成功した。しかし、同定された2つの遺伝子は、本症に対するマクロファージおよびB細胞の関与を示唆するもので、既知の知見を確認するに留まった。 本症に関与する新規あるいは予想外の遺伝子同定には、なお研究を要すると考えられた。
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