研究概要 |
計30人の心移植待機患者を対象とした。年齢は7-54、平均32.9歳、男性27例、女性3例であった。うち15人がLVAS装着患者(LVAS群)であった。これらの患者から径時的に血清を採取し、日本人のパネル細胞を用いた抗Tおよび抗B細胞抗体を検出し%PRAを算出、10%以上を陽性とした。また、末哨血IL6,IL8値をELISA法により測定した。移植後の拒絶反応との相関が強いとされる抗HLA class I抗体を反映する抗T細胞抗体陽性例についてその経過を検討した。LVAS装着患者15例中4例(26.7%)、非装着患者15例中2例(13.3%)において抗T抗体陽性となった。非LVAS群の2例中1例は移植にいたったが、拒絶反応を認めなかった。もう1例は約1年にわたり高値を持続したため、サイクロフォスファミドによる治療を行ったところ抗T細胞抗体の低下を認め、現在移植待機中である。LVAS患者T抗体陽性4例のうち1例では約2年の経過中徐々に%PRA低下し陰性となり、ドナー出現時にダイレクトクロスマッチ陰性であったため心移植を行った。しかし、術後1週間目に著明な心機能低下を認め、心筋生検では有意の細胞浸潤はなく、末哨血血清中にドナー脾細胞に反応する抗体を認めたため液性拒絶反応と診断した。血漿交換を含む治療により抗体価の低下を認め心機能もこれに伴って改善した。他の2例ではLVAS装着後14,32%と軽度高値であったが、LVAS装着中に自然に陰性化した。残り1例はLVASに関連した感染症を持続的に認め感染性心内膜炎から死亡した症例であったが、約10ヶ月の経過中%PRA値は80-93%と高値で推移した。この症例での血中IL6,IL8値は前3例に比し有意に高値で推移し、持続的高サイトカイン血症がアロ抗体産生に関与している可能生が示唆された。
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