研究概要 |
虚血性心疾患に対する骨髄細胞を用いた血管新生療法における至適投与経路についての検討した 実験方法 1)骨髄細胞の採集:オスのDAラットの大腿骨と脛骨から骨髄細胞を採取し、比重遠心法により骨髄単核球を分離採集する。 2)急性心筋梗塞モデルを作成と骨髄細胞の投与:メスのDAラットの冠状動脈の前下行枝を結紮して、急性心筋梗塞モデルを作成する。新鮮採集した骨髄単核球細胞(2x10^7/匹)を梗塞心筋内に4カ所局所投与(局所投与群)、あるいは経静脈的に全身投与(全身投与群)する。 3)治療効果の評価: (1)残存細胞の測定:投与3,7,14日後の梗塞心筋および非梗塞心筋から、DNAを抽出し、Y染色体上の遺伝子(SRY遺伝子)をPCRで測定し、残存細胞数を相対的に定量評価する。 (2)心機能測定:投与3,7,14日後に経胸壁心エコーを行い、心機能を測定する。 (3)梗塞領域の血流量測定:投与14日後に、Colored-Microsphere法により、梗塞部位心筋と健常心筋の血流比率を測定する。 実験結果 1)骨髄細胞投与後3,7,14日目の梗塞心筋および非梗塞心筋のDNAのPCRを行ったところ、局所投与3日と7日目の心筋梗塞領域SRY遺伝子検出量は全身投与と比べ明らかに多かった。 2)治療後3日と7日目の心機能は両群間に有意差は認めなかったが、投与14日目のEjection Fractionは、全身投与群が38.1%であるのに対し局所投与群が61.3%と有意に良好であった(P<0.001)。 3)治療14日後の梗塞領域の血流回復は局所投与群が78.6%であったのに対し全身投与群では51.3%であった(P<0.001)。 以上の結果より、同数の骨髄単核球細胞を用いた場合には、急性心筋梗塞に対する血管新生誘導と心機能改善効果が全身投与法より、局所投与経路は明らかに優れていた。骨髄細胞移植による血管新生治療の至適な投与方法は心筋内への局所投与であると示唆された。
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