研究概要 |
凍結保存弁の耐久性は,生存線維芽細胞による弁基質を構成するコラーゲンの合成,分解能に依存しているとされる。しかし,我々は凍結保存弁の内皮細胞と線維芽細胞の生存性,コラーゲン合成能が傷害され,分解能が亢進した状態で移植されていることを明らかにし,それが移値後の弁変性,破壊につながる可能性を指摘してきた。本研究の目的は,解凍後の凍結保存弁の組織培養により採取した新鮮弁に近い状態に回復させうるか否か検討することにあるが,まず,培養ヒト膵帯静脈内皮細胞(HUVEC)において検討することとした。 解凍した凍結保存HUVECsを増殖因子を含んだ培地で培養することによって,凍結保存工程により傷害されたミトコンドリア脱水素酵素活性ならびに細胞質エステラーゼ活性が,どのように回復していくか検討した。プログラムフリーザーで凍結したHUVECsの液体窒素196℃の気相内での保存は1-10日間とした。 解凍直後からEGM-2培地で0日,2日,4日,6日,8日,10日間培養したHUVECsのミトコンドリア脱水素酵素活性は,新鮮HUVECsの8%,8%,14%,20%,31%,51%に回腹した。この回復過程からすると2週間の培養器間で新鮮HUVECsと同等のミトコンドリア脱水素酵素機能に回復することになる。一方,細胞質エステラーゼ活性は7%,12%,13%,10%,10%,11%しか回復しなかった。この2つの酵素活性の回復度の差が何を意味するか不明であるので,現在,HUVECsの一酸化窒素合成能,コラーゲナーゼ活性について検討している。そして,最終目標である凍結保存弁組織の同代謝機能の回復について研究を進めている。
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