研究概要 |
我々は非小細胞肺癌における血管新生の実態と治療への可能性を探求するため,多種多様な血管新生促進因子及び血管新生抑制因子の発現を包括的に評価を行ってきた.まず、外科的切除術を行った非小細胞肺癌の凍結腫瘍標本からRNAを抽出し,quantitative RT-PCR法によりVEGF及びPD-ECGF, HGFなどの血管新生因子の遺伝子発現量を定量した.また腫瘍のパラフィン切片を用い,VEGF, PD-ECGF, IL-8などの血管新生因子の蛋白発現も免疫組織化学的に評価し,同時に腫瘍内微小血管密度を測定した.そして,これら血管新生因子に対する包括的解析に,術後生存期間などを含めた臨床的検討も加えた.その結果,非小細胞肺癌患者ではでは,VEGFとIL-8の腫瘍内発現が血管新生に有意に関連し,そして血管新生は有意な予後不良因子であることが認められた.現在我々は血管新生抑制因子にも更に検討を行っている. 一方,近年数種類の血管新生抑制剤が作製されているが,これら薬剤が血管新生のどの過程で,どの因子と,どのような機序で作用しているのかは,いまだ解明が不十分である.そこで,更に我々は肺癌腫瘍をヌードマウスに移植し,TNP-470(タケダ製薬株式会社から提供)などの血管新生抑制剤を投与し,これらの治療効果を評価している.我々はそのpilot studyとして,ヌードマウスに移植したヒト肺癌細胞株A549が,VEGFの投与により腫瘍の増殖度が亢進すること,更にTNP-470の投与によりその腫瘍増殖度が低下することを見いだした.現在我々は,その他の様々な肺癌細胞株に血管新生因子及び血管新生因子の解析を行い,これらをヌードマウスに移植し,TNP-470やBay12-9566,CGS27023Aなどの血管新生抑制剤を投与し,腫瘍の増殖度と血管新生について検討を行っている.
|