研究概要 |
非小細胞肺癌の発生、進展には複数のがん抑制遺伝子の不活化が関与しているが、その中でも特にp16^<INK4a>(inhibition of CDK4)の不活化は高頻度に見られる。そこでp16^<INK4a>と共にp16^<INK4a>と同じ遺伝子座にコードされるp14^<ARF>(alternative reading frame)にも注目し、1998年から1999年に当院で手術を施行された原発性非小細胞肺癌切除例67例の腫瘍組織と隣接正常肺組織を対象にp16^<INK4a>とp14^<ARF>のmRNAレベルでの発現の比率(以下p16^<INK4a>/p14^<ARF>値)をcompetitve RT-PCR法を用いて定量化し様々な臨床病理組織学的因子や予後との関連を検討した。 p16^<INK4a>/p14^<ARF>値は肺癌組織では正常肺組織に比べて有意に低値であった(p<0.0001)。腫瘍組織においてp16^<INK4a>/p14^<ARF>値を16^<INK4a>/p14^<ARF>値>-0.2群(n=34)とp16^<INK4a>/p14^<ARF>値<-0.2群(n=33)の2群に分けて臨床病理学的因子との相関を検討したところ年齢、性別、病期、T因子、N因子との相関は認めなかった。予後の検討ではp16^<INK4a>/p14^<ARF>値<-0.2群はp16^<INK4a>/p14^<ARF>値>-0.2群に比べて有意に予後不良であった(log rank test, p=0.011)。また、多変量CoxハザードモデルでもN因子(p=0.038)とp16^<INK4a>/p14^<ARF>値(p=0.033)が有意な予後因子であった。 p16^<INK4a>とp14^<ARF>のmRNAレベルでの発現の比率は原発性非小細胞肺癌では正常肺組織と比べて有意に低値であり、またN因子とは独立した予後因子となる可能性が示唆された。
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