9番染色体の短腕21領域に存在するCDKN2遺伝子座は細胞周期制御に関連するp16^<INK4a>とp14^<ARF>をコードしている。p16^<INK4a>とp14^<ARF>はそれぞれ異なった細胞周期抑制経路(p16^<INK4a>はRb経路、p14^<ARF>はp53経路)で重要な役割を担っている。非小細胞肺癌切除例60例の正常肺組織とを対象にp16^<INK4a>とp14^<ARF>のmRNAの発現の比率をcompetitive RT-PCR法を用いて解析し臨床病理学的所見との関連を検討した。正常肺組織(n=60)ではp16^<INK4a>の発現はp14^<ARF>の発現と同等か僅め強かった。腫瘍組織では60例中38例(63%)でp16^<INK4a>の発現はp14^<ARF>の発現と同等か僅か弱く、6例(10%)でp16^<INK4a>の発現はp14^<ARF>の発現より弱く、15例(25%)でp16^<INK4a>の発現はp14^<ARF>の発現より明らかに弱くほとんど発現していなかった。また、1例(2%)のみp14^<ARF>の発現はp16^<INK4a>の発現より明らかに弱くほとんど発現していなかった。腫瘍組織におけるp16^<INK4a>とp14^<ARF>のmRNAの発現の比率(以下p16^<INK4a>/p14^<ARF>値)と臨床病理学的所見との検討ではp stage II-IV症例(n=30)はp stage I症例(N=30)と比較して有意にp16^<INK4a>/p14^<ARF>値が低く(P=0.036)、p T2-4症例(n=44)はp T1症例(n=16)と比較して有意にp16^<INK4a>/P14^<ARF>値が低く(P=0.005)、p N1-3症例(n=14)はp NO症例(n=46)と比較して有意にp16^<INK4a>/p14^<ARF>値が低かった(P=0.014)。以上の結果より非小細胞肺癌においてp16^<INK4a>とp14^<ARF>の発現のmRNAの比率は腫瘍進展と関連していることが示唆された。
|